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靴と足の病気・上手な靴の選び方

 近年、わが国では下駄やサンダルが廃れて靴の社会となりました。そのために、ハイヒール・パンプス・スニーカーなど特に女性の靴のファッション化は急激に上昇の一途をたどつています。しかし、このファッション性を重視するあまり、靴の機能性がないがしろにされて、窮屈な靴が足を痛めつけ足の病気が増加してきています。
 

外反母趾

 患者の多くは女性で以前は欧米人に多く、たたみの上で生活をする日本人にはまれとされてきましたが現在では珍しいものではなく、むしろ増加傾向にあります。特に長時間靴をはいたまま立って働く女性の五人に一人にみられるといわれています。
 外反母趾とは、足の親指(母趾)が指のつけ根(中足骨趾骨間関節)から小指側に曲がり、関節が外側にとび出すように変形して足が菱形になってしまうような状態をいいます。
 原因としては、生まれつき母趾の中足骨と第二趾の中足骨の角度が大きいこと・母趾がほかの足指の長さより相対的に長いことなどで、そのほかには足先の細いハイヒールなどの靴をはいたり、長時間の立ち仕事なども原因となります。靴のヒールが高ければ高いほど、外反母趾になりやすいといわれています。
 主症状としては、母趾のつけ根の関節の痛みと変形です。痛みは靴をはいたときだけの場合や安静時にも痛む場合などさまざまで、突出しているところが靴のために圧迫されたり摩擦されたりして炎症をおこしたりもします。
 治療方法として、程度の軽いものは、靴をはかないでいたり、母趾と第二趾のあいだにゴム製の中敷などをあてたりすることで痛みはなくなります。
 また足の筋肉を強化する運動は進行防止に効果があります。
 足に体重がかかるため、肥満の人は体重を減らし、立ち仕事の多い人は作業環境の改善をしたり足に無理な負担をかけないようにしましょう。足が疲れたときはひと休みして足の裏を軽くマッサージしたりしましょう。
 変形が進行した例や痛みが強い場合で、治療を続けても効果がないような場合には手術を行います。手術では、腱を移す方法や骨の角度を変える方法・関節を固定する方法などが程度に応じて選択されます。症状が出た場合は、進行させないようにすることが大切です。手術の経過は一般的に良好です。
 外反母趾の予防には、自分の足に合ったはきやすい靴を選ぶのがたいせつです。自分の足のサイズを正確に知り、ヒールはできるだけ低く、幅の広い軟らかい靴が適当ですが最近では外反母趾になりにくい靴も市販されています。
 

中足骨骨頭痛

 ハイヒールをはく女性に起こる特有の病気で、足指のつけ根が激しく痛みます。この他にも、ウオノメ・タコ・アキレス腱炎・扁平足・靴ずれ・まちがった靴選び、すなわち、自分の足にピッタリでない靴や、細すぎるハイヒールが原因となって生ずる足の病気がたくさんあります。さらに、合わない靴のために足の痛みから腰痛へ発展するケースなどもあり、不安定な靴による転倒などで思わぬケガが生ずる場合もありうるのです。
 ヒトが素足で起立すると、体重の約 80パーセントがかかとにかかってきます。残りの約 20パーセントが足指のつけ根、すなわち中足骨骨頭部にかかり、かつその半分が親指のつけ根にかかります。ヒールが高くなると、かかとへの加重が減少し、足の指のつけ根への加重が増大します。4センチのヒールでは、かかとにかかる力は、体重の約 66パーセントに減少し、足指のつけ根にかかる力は 32パーセントに増加します。7.5センチ以上のハイヒールでは、かかとにかかる力は体重の 36パーセントにまで減少し、足指のつけ根にかかる力は62パーセントに増加します。
 このように、ハイヒールはいかに足を痛めつけているかがわかります。もちろん肥満の人では、この加重はさらに増大します。
靴 これらの病気で悩んでいる女性患者さんに、ハイヒールをはかないように指導するのですが、足の痛みよりハイヒールのかっこうのよさに負けてしまう人が多いのです。
 

陥入爪

 足の親指の爪が肉に食い込んで激痛を生じ、かつ次第に爪の外縁に肉芽が盛り上がってくる病気です。ハイヒール以外でも窮屈すぎる靴をはいていると起こる病気で、男女共に生じます。治療は外科的に食い込んでいる爪の部分を切除します。
 

上手な靴の選び方

 合わない靴をはいているために生じる病気には、直接足に起こる病気と足以外の全身に起こる病気があります。足に起こる病気としては先程ものべた、外反母趾・陥入爪・中足骨骨頭痛のほかに、靭帯の動きが悪くなったり痛みを生じたりする足根管症候群・アキレス腱周囲炎などがあります。また、合わない靴はウォノメやタコを悪化させることになります。このほかにも足の神経を支配している脊髄神経の枝に長期間にわたって異常な刺激が加わると頭痛・腰痛・食欲不振などの原因になることもあります。
 このような病気の予防や対策のためにも、自分に合った靴選びをすることがたいせつです。よい靴は 「はいていることを全く感じさせない」などといわれますが、実際にはどんな靴でも多少足を締めつけたり、刺激したりするものです。従って、現実的にはこの締めつけや刺激が軽度で心地よいものであればよい靴であると考えることができます。
 よい靴を選ぶためには、実際にはいてみることがたいせつです。靴選びのポイントは、この一点につきるといってもよいでしょう。その際はかならず両足にはき、四~五歩前後に歩いてみてください。足の接地面積はきき足のほうが大きいといわれており、左右で異なるのがふつうですから、両足での 「試しばき」はぜひとも必要です。靴また、実際に歩いてみることによって、静止状態とはちがった、靴からうける刺激の大小を確認することができます。つま先で立って歩いてみて、かかとが脱げたりずれたりしないことを確認すれば、より完壁な試しばきになります。
 一般に、靴屋の店頭でできる実用テストは以上のようなところが限界でしょう。その結果、足の真にぴつたりと吸いつくようにフィットしたものをみつけ出すことができたら、つぎの機会にも役立つよう、要点をメモしておくとよいでしょう。

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