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ご注意!糖尿病食による骨粗鬆症

● 増加する骨粗鬆症患者
 骨からカルシウムが抜け出て、骨がスカスカになる骨粗鬆症の患者数は、年々増加しています。
 骨粗鬆は女性がかかる比率が高く、男性の4倍ですが、この病気が女性専科というわけではありません。
 先日、64歳になる某社の専務のS氏は、奥様(61歳)を伴って来院したのですが、彼の主訴は慢性の腰痛でした。洗面動作などの前屈時の腰脊部の重苦しさがその詳細です。
 早速、腰脊部のⅩ線検査とMRI検査に加え、手の骨で「骨密度」を測定するPDXA法(二重エネルギーⅩ線吸収法) にて骨量を測ってみました。骨密度の測定には奥様も参加していただきました。
 奥様の計測値は、橈骨+尺骨超遠位で骨密度0.235g/㎝2、骨塩量0.893gで、対同年代比87.6%でした。これに反して、S氏の同部位での計測値は、骨密度0.271g/cm2、骨塩量1.210gで、これは同年代比70.4%で激しい骨密度の低下を示し、骨折の危険を示す状態でした。
 MRIでは、脊柱管狭さく症はないものの、Ⅹ線写真では、脳椎下部の椎体前方構成要素に椎体圧迫骨折を示唆する所見が得られました。

● 極端な低カロリー食は禁物
 その原因について検索したところ、この十年来糖尿病を患い、1日1600キロカロリーの食事を守ってきたとのことでした。これは、奥様の熱心な献立と監視の賜物といわざるを得ません。S氏の身長は172cm、体重62kgですから、食事療法がきつかったのでしょう。
 エネルギーの摂取量の少ない人では、カルシウム摂取量も減少する傾向がみられます。1800キロカロリー未満の摂取エネルギーでは1日のカルシウム摂取量は430mgにすぎないのです。1日に600mgのカルシウムを摂るためには、2300~2400キロカロリーの食事を摂らなければなりません。それ故、糖尿病の低カロリー食ではカルシウム摂取量に気を配り、不足のときにカルシウムを補給する必要があります。
 骨に蓄えられたカルシウムは血中のカルシウム濃度を一定に保つ働きをしています。言い換えると、脳や心臓の細胞が正常に働いているのは、血中のカルシウム量が常に一定になっているからです。骨粗鬆症が長く続くと、カルシウムバラドックスという現象を起こすことがあります。血中のカルシウム量が足りないと、副甲状腺ホルモンが骨からカルシウムを取り出し、血管や脳、膵臓に押し込み、動脈硬化、痴呆症、糖尿病をも引き起こしてしまいます。ちなみにS氏の血中カルシウム量は、8.2mg/dlと低値でした。

健康管理 ビジネスマンの診察室 より
 九段クリニック院長 医学博士 阿部博幸




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