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やられた!魔女の一撃・ギックリ腰

● 腰痛は二本足で立った人間の宿命
 土曜の夜のこと、あるパーティーに参加し上機嫌で家に帰ると、W氏から電話がかかってきました。高血圧持ちの彼のことなので、また頭痛やめまいの相談かな、と思ったのですが、そうではありませんでした。「寝ころびながらテレビを見ていて、ひねり腰で立ち上がろうとしたら、腰骨がギクツと鳴り、それっきり痛みのために立つこともできない」電話の向こうでは、いつもの豪快さはありません。
 そもそも、腰痛は動物にはありません。人間は、その進化の過程において「腰部への負担」を代償として二本足で立ち、手を自由に使って創造的な文明を築きあげたのです。そのため人間は腰痛という宿命を背負うことになったのです。ですから、誰でも一度や二度は腰痛を経験しているはずです。
 背骨は、30度に傾斜した骨盤の上に、推間板という軟骨様組織をのりのようにして推骨という煉瓦を積み上げた構造になっています。この身体の支柱となる脊柱を筋肉によってバランスよく支え、人間は姿勢を保っています。
 腰痛の中でも、W氏の例のように急に起こる腰痛は、ギックリ腰または魔女の一撃ともいわれ寝返りもできないほどの非常な痛みです。これは脊柱管狭窄症(椎間板ヘルニア)と呼ばれる病気です。40歳以後の年齢で見られるのですが、若いスポーツマンなどでは、脊柱分離症がよく見られます。
 腰痛の原因として、背骨の欠陥、内臓疾患、うつ病の三大原因があげられます。不用意な動作や不良姿勢は、脊柱障害を起こします。また、胃潰瘍、胆石、腎結石、前立腺癌、乳癌、甲状腺癌の骨転移ということもあります。うつ病の姿勢も腰痛をもたらします。
● 予防も治療も日常生活の中にある
 私は、W氏に次のようなアドバイスをしました。「今、足がしびれていないのなら、あわてて手術を選ぶ必要はありませんよ」と。今日では、脊柱管狭窄症もほとんど保存的治療で直ります。
 24時間の生活管理と運動、特に腰痛体繰に加えて、マッサージやコルセットを併用するとほとんどの腰痛はいつの間にか消失します。硬いベッドの上に寝ると良いといわれますが、尻の重みでマットが2cmぐらい沈む硬さが良いでしょう。
 予防法も伝授しました。よく動きよく休むこと。モデルのような良い姿勢で歩くこと。腰痛体操に励み、腹筋、背筋を鍛えること。よく歩くこと。水泳のようなスポーツも良い。最後に、オーバーウェイトにならぬよう体重をコントロールすること。
 腰痛の予防も治療も日常の生活の中にあることを知るべきでしょう。W氏が笑顔で診察室を訪れたのは、10日後のことでした。



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