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人工弁について

Q、人工弁には、どのようなものがあるのでしょうか。また、機械弁と生体弁の長所、短所について教えてください。
A、人工弁には、いろいろなものがあり、表に示すように機械弁と生体弁に大別されます。機械弁は、できるだけ人体の弁に近い生理的な機能を備えるように、長い間研究に研究が重ねられ、耐久性に優れたいくつかのモデルが開発されています。その素材も生体になじみやすいものが使用されています。機械弁は血栓形成の場を与えやすいので、置換手術後には抗凝固剤を服用して、脳、腎、冠状動脈などの塞栓症を予防します。また、弁への感染を予防するために、小手術や歯科的処置、扁桃炎などのときには抗生物質を使用します。
 機械弁と生体弁が使用されている比率は、施設により異なりますが、約 5対1であり、機械弁の中では、ディスク型とリーフレット型が多く使用されています。機械弁には多くの工夫がなされていて、年々、より生理的な弁が開発され、耐久性もよく、大量生産も可能で、入手しやすいという利点があります。
 その点、生体弁についていえば、同種弁、つまり人体の弁については簡単に入手し難く、免疫学的な処理、保存上の工夫が必要です。異種弁では、ブタ、仔ウシの生体弁がよく用いられていますが、これらに関しても、耐久性は機械に比べ優れているとはいえません。
 しかし、生体弁には、機械にない利点があります。それは、置換後の弁機能および心機能が、血行力学的な面で優れており、血栓、塞栓症の発生が少なく、ある時期を過ぎると抗凝固薬を服用しなくてもよいということです。
 先に述べた機械弁については、耐久性に優れている反面、抗凝固療法の必要性や金属的な音を発生させて不快感を与えることなどが、デメリットとしてあげられます。
 人工弁が心臓の拍動による動きに耐えて、どれだけ長く機能を保つことができるかは、医師のみならず、患者にとっても大いに関心のあるところでしょう。クラークらが、駆動ポンプを使用して測定した機械弁の寿命は、プジョルク・シャイリ・ディスク弁で 24年、リリハイ・キャスター・ディスク弁で 19年以上、ハンコック生体弁で1.6年という報告があります。しかし、生体弁ではすでに、臨床ではおよそ 10年の耐久性が認められており、2年以下とする実験の結果と一致しません。これは、超振動装置と実際の心拍動による血流とは弁にかかる負担が異なり、生体内での真の寿命を表現していないと考えられます。
 機械弁を使用するか、生体弁を使用するかは、患者の年令、生別、冒された弁、心臓の大きさなどにより決められます。

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