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飛行中パイロットが心臓死!

 突然死のなかで最も恐怖に満ちているのは、飛行中のパイロットの突然死でしょう。もし、空中で航空機を操縦する人が急死したら、航空機と乗客はどうなるでしょうか。カタストロフィー・シリーズの映画のような光景が、一瞬、眼の前をよぎります。
 しかし、最近多発している航空機事故のなかには、この恐怖が現実のものとなった事例が報道されています。
 「中華航空機、ゴーアラウンド直後、操縦士、心臓マヒ死」(平成6年5月18日付『朝日新聞』夕刊)そしてその8日後、またしても、「飛行中、機長が急死。成田着の英機、副操縦士が操縦」(平成6年5月26日付『朝日新聞』夕刊)と、連鎖反応的にパイロットの心臓死の報道が続いたことを記憶している方も多いかと思います。
 人の命を預かることの重要性
 いずれの場合も、パイロットの急性心筋梗塞による死亡でした。操縦室の中の人々の機転で大事故には至らなかったものの、構内のパニック状況は想像に難くありません。
 飛行中、パイロットは二人体制で勤務しているとはいえ、離陸、着陸の際の緊張感の高まりを考えると、心臓の負担が急上昇する一瞬だけに、現在のこの勤務体制は、乗客の安全のために一考を要するものがあります。
 航空機ばかりでなく、バス、列車など公共交通機関で多くの人々を乗せる場合には、それを操縦または運転する人の健康状態が即、利用客の命に直結してきます。
 これらのパイロットや職業運転手については、かなりきびしい健康管理がなされているはずです。
 しかし、前述のような死亡事故が明らかになったことは、現実には必ずしも完壁な健康診断が行われていなかったということです。特に、心臓について、それぞれの会社がどれほどシビアにチェックしているのでしょうか。安静時の心電図のチェックのみでは、心臓が実際危険な状態にあっても、これを察知することはできません。また、運動負荷心電図によるチェックでも、運動量の程度によって変化が表れない場合もあり、陰性(変化が表れないこと)であるからといって、100%異常なしというわけにもいきません。
 わが国でも突然死は急性心臓死のトップを占めていることを念頭におくと、パイロットやそれに準ずる職業人は、やはり、定期健康診断に冠状動脈造影法まで採り入れるべきでしょう。
 パイロットの勤務時間中は、重い責任と緊張の連続であり、日常生活とのストレスの落差が大きい。それだけに、心臓血管系にかかる負荷の変動も大きくなります。それゆえに、冠状動脈に動脈硬化を起こし、狭心症や心筋梗塞を発症する可能性が高いのです。
 パイロットの健康は航空機の性能と同様に安全飛行には不可欠のものです。

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