トップページ

「女性の貧血と子宮筋腫」

見つけにくい貧血
 一般に、血液中の血色素の値が著しく減少した状態を貧血と言いますが、その症状および原因は多岐にわたっています。
 貧血の約8割を占める鉄欠乏性貧血ならば、黒ゴマ・プルーン・小豆・レバーなど色の濃い食べ物をしつかり摂って鉄分を補給すれば良いのですが、胃潰瘍や痔、子宮筋腫などによる出血によつても貧血は引き起こされるので、注意が必要です。
 なぜなら、普段の生活においては「早足で歩いたり運動したりしたときに、息切れしてなかなかおさまらない」「顔色が悪い」「食欲が無い」といった状態のときは、これを貧血の症状とは結びつけず、ただの体調不良とみなしてしまいがちだからです。
 血液の検査をすれば症状が貧血によるものかどうかを調べることができます。もし貧血との診断がくだされた場合は、これを軽く考えず、病気との関連を さらに診断してもらうようにしましょう。
● OLに増える貧血
 最近、貧血を主訴としてクリニックを訪れるOLが多くなっています。症状としては、疲れやすく息切れがする、めまいがする、足がむくむなどのケースが多いのです。
 42歳のSさんもその一人です。血液検査をしてみると、鉄欠乏性貧血でした。これは、何らかの原因で鉄が欠乏することにより起こる貧血です。鉄は血色素であるヘモグロビンの構成成分なので、その欠乏により、赤芽球のヘモグロビン合成が行われず、不完全な赤芽球が生まれると、それはすぐさま骨髄内で破壊されてしまいます。また、産生された赤血球もその大きさが小さく、ヘモグロビン含有量が少ないため、「小球性低色素性貧血」となります。
 鉄欠乏性貧血は、鉄の供給と需要のアンバランスによって起こります。まず、鉄の供給の低下は、極度な偏食、胃切除、吸収不完全症候群によって起こります。一方、鉄需要の増加は、成長、妊娠・出産・授乳、出血等が原因となります。

● 癌も考えられる子宮出血

 出血は成人女性では、圧倒的に月経過多のことが多く、その原因には子宮筋腫や子宮内膜症があります。閉経後の女性では、消化管からの出血であり、潰瘍、癌、ポリープ、憩室、痔などについて、徹底的な検査が必要です。Sさんの場合は、偏食はなく、月経過多であることから、子宮出血が原因と考えられます。
 一般に女性は婦人科の診察を受けるのに心理的な抵抗があり、定期検査も意外に受診率が低いのです。そこでSさんには、MRIによる骨盤腔ドック(婦人科ドック)を受けていただきました。
 骨盤腔ドックは、磁気共鳴を応用したもので、放射線を浴びずに、また直接体に触れることなく子宮や卵巣などを任意の方向から観察することができます。この骨盤腔ドックには、膣内容の自己採集による子宮癌細胞診も含まれています。これから普及する専門ドックの一つです。
 Sさんの場合は、T2強調横断像で子宮は腫大していて、筋層内に境界明瞭な低信号の子宮筋腫を認めました。また、両側の卵巣はT2強調像で高信号、T1強調像では低信号で正常卵胞でした。子宮筋腫が貧血の原因ということが分かります。
 貧血も長期にわたると、全身倦怠感や動悸のほかに、舌炎・口内炎、胃粘膜萎縮、嚥下障害、さじ状爪などが見られます。
 鉄欠乏性貧血の治療は、原因疾患の治療と鉄剤の投与です。Sさんの場合は、来院時のヘモグロビンが6.4g/dlと正常の約半数、血清フェリツン2μg/mlと正常の6分の1でした。鉄剤の投与により3ケ月で貧血は改善しましたが、中止したところ再発したため、Sさんにはやっと子宮筋腫の摘出手術に同意していただきました。

画像
病気Ⅲ・病気情報のご案内

ページの上に 戻る↑